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中国で相次ぐマラソン大会の中止の事情2025.10.21

2018年の広州マラソン。フルマラソンしか申し込めないし抽選制となっている

情報源

全国取消调整近百场马拉松

十月以降はマラソン大会の最盛期である。しかし、今年は相次いで大会の中止や縮小が発表された。山西省臨汾市、河北省保定市蠡県、北京市の龍形などのハーフマラソンは中止となり、四川省宜賓マラソンも10㎞エリートレースと5㎞ファンランを取りやめ、フルとハーフのみの開催に変更された。さらに、11月に予定されている北京常営ハーフマラソンも開催が不透明な状況にある。
 これらの中止の背景には、マラソン大会に対する政策の引き締めがある。中国陸上競技協会は今年7月に「マラソン大会の組織運営をさらに強化する通知」を発表し、開催要件を厳格化した。さらに、「県や区レベル以下のCクラス大会は今後開催されない」との噂もあり、公式には否定されていないが、全体として大会の管理が厳しくなっていると言える。

大会が急増した背景

 そもそも各地でマラソン大会が急増したのは、経済発展と政策緩和によるものである。スポーツ界には「マラソンサイクル」という概念があり、1人あたりGDPが5000ドルを超えると都市マラソンのブームが到来するといわれている。中国では2011年にこの水準を超えた年から大会数が急増し、15年には国家体育総局がマラソン大会の「許可制」を廃止し「届出制」としたことで一気に広がった。中国陸上競技協会(中国田径協会)によると、25年前半だけで全国で300大会以上が開催され、1日平均2大会が行われていた計算になる。
 しかし急速な拡大の裏で、運営レベルの格差や安全・管理面の問題が浮き彫りになっている。今回中止となった大会の多くは、区や県が主催する「Cクラス」と呼ばれる低ランク大会である。 マラソン大会はA(A1・A2)、B、Cの3ランクに分かれ、Cクラスは社会団体などが主催し、参加者300人以上の地方規模の大会を指す。こうした大会であっても運営コストは高く、1回あたり500万~1000万元が必要とされ、地方政府にとっては大きな負担となっている。

マラソンは儲からない!?

 「マラソンは儲かる」という声もあるが、利益が見込めるのは一部のトップ大会に限られる。例えば世界陸連のゴールドラベルに認定された「2025蘭州マラソン」は、直接経済効果が6.6億元に達したとされる。しかし多くの大会は赤字運営であり、スポンサー収入や参加費を差し引いても平均140万元以上の不足が生じているという。運営会社に対して地方政府が補助金を出す例も多く、武漢マラソンでは政府補助が運営会社収入の15〜20%を占めるとされる。
 では、地方政府がなぜ補助してまで大会を開くのか。それは都市ブランドの向上に加え、観光や宿泊、飲食などの経済波及効果を期待しているためである。北京、上海、広州といった上位大会であれば、外地からのランナーが多数訪れ、地域経済を活性化させる効果がある。しかし、区や県レベルの大会では集客力が弱く、経済効果も限定的である。大会が乱立すれば価値が下がり、特に低レベル大会は地域イベントの域を出ず、外部ランナーの参加意欲も低い。
 マラソン愛好家の間でも変化が見られる。あるベテランランナーは「今は大会ではなく都市で選ぶ。好きな都市なら走りに行くが、マラソンそのものは目的ではない」と語る。こうした意識の変化は、マラソンブームが成熟期に入ったことを示している。
過熱期を経た今、マラソン大会にはより冷静で持続可能な運営が求められている。地方財政に無理を強いる中小大会を整理する動きは、結果的に健全化への一歩といえる。マラソンの「量」から「質」へと転換する時期が、いま訪れているのだ。

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