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【中国自動車最前線2】苦境の蔚来(NIO)、2025年の展望2025.03.27

電池交換ステーション設置で有名になったが実は赤字続き!?
過去の財務データを振り返ると、蔚来は急速に成長し売上を拡大してきたものの、依然として黒字化には至っていない。2018年から24年までの親会社株主に帰属する純利益は、それぞれ-96.61億元、-114.1億元、-56.11億元、-105.7億元、-145.6億元、-211.5億元、-226.6億元となっており、7年間の累計赤字は956.22億元に達している。
市場競争と蔚来の立ち位置
かつて理想汽車(Li Auto)、小鵬汽車(Xpeng)と並び「蔚小理」と称された蔚来であるが、現在は厳しい競争環境に置かれている。2024年の中国新エネルギー車(NEV)市場の乗用車販売ランキングTOP10において、理想汽車はランクインしたものの、蔚来は圏外であった。2024年の年間販売台数は約22.2万台で、前年比38.7%の増加にとどまっている。
一方、競合である小鵬汽車は、サプライチェーン改革や経営陣の刷新、フォルクスワーゲン(VW)との提携を進め、販売台数を大幅に伸ばしている。2025年第1四半期の販売見込みは9.1万〜9.3万台であり、同年第4四半期には黒字化を達成すると予測されている。
さらに、零跑汽車(Leapmotor)は、スケールメリットと技術革新によるコスト削減を通じて黒字転換を実現し、2024年第4四半期には13.3%の粗利益率を記録、単四半期で8000万元の黒字を達成した。
加えて、新たなダークホースとして、華為(Huawei)の「鴻蒙智行」および小米汽車(Xiaomi EV)が急成長し、新エネルギー車市場の勢力図を塗り替えている。鴻蒙智行は2024年に約44.5万台を販売し、小米汽車は同年12月末時点で13.68万台を販売。2025年の年間販売目標を当初の30万台から35万台へ引き上げた。このように、蔚来は一方で理想汽車や小鵬汽車に販売台数で逆転され、他方では小米汽車や鴻蒙智行の追い上げを受けるという厳しい状況に直面している。
2025年、蔚来の戦略
蔚来の子会社の楽道
同年2月、創業者兼CEOの李斌氏は、「2025年は蔚来にとって技術の年、製品の年である」と強調した。製品面では、蔚来の第三ブランド「蛍火虫(Firefly)」の第一弾モデルを4月19日に発表し、即日納車を開始する予定である。本モデルは、15万元クラスのハイエンド小型車市場をターゲットとしている。
しかし、この価格帯にはすでにBYD、吉利(Geely)、広汽埃安(AION)といったメーカーが強力な競争力を持つEVを投入しており、2025年第3四半期にはテスラも同価格帯のコンパクトEVを発表すると予想されている。蔚来がこの競争を勝ち抜くためには、生産能力と価格戦略の柔軟性を確保するとともに、ブランドイメージの向上が不可欠である。
技術面では、2025年3月より、独自開発のフルスタック車載OS「SkyOS・天枢」、世界初の5nm車載向けAI運転支援チップ「神璣チップ」、次世代エンドツーエンド都市型自動運転システムを順次導入し、市場競争力の向上を図る。
バッテリー面では、25年はバッテリー交換ネットワーク拡大の重要な年となり、李斌氏は「上海のバッテリー交換ステーションはほぼ黒字化に近づいている」と述べ、さらなる展開を進める方針を示している。この動きのなか、同年3月17日には大手バッテリーメーカーの寧徳時代(CATL)と福建省寧徳市で戦略的提携を締結し、バッテリー規格の統一と交換ネットワークの相互利用を推進することに加え、蔚来のバッテリー交換網の拡張を寧徳時代が支援することを発表した。
さらに、蔚来の「蛍火虫」ブランドの新型車には、寧徳時代の「巧克力(チョコレート)」バッテリー交換システムを導入する計画であり、加えて寧徳時代は蔚来能源(NIO Energy)に最大25億元の戦略投資を実施し、蔚来の資金繰り改善にも貢献する見込みである。
現在、中国のEV市場は群雄割拠の時代を迎え、熾烈な競争が繰り広げられている。こうした「後半戦」において、蔚来がどのように販売台数を拡大し、黒字化を実現するのか。その動向に今後も注目が集まる。