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【中国自動車最前線】クルマの価格戦争は集結したのか?ー嵐の前の静けさのいま2025.07.24

小米YU7。小米公式サイトより

 

 2025年6月26日より発売を開始した小米YU7が大ヒットを記録したことは、誰にとっても意外ではなかったが、発売18時間でこの日の予約台数の上限が24万台を突破したことは、自動車業界にとっても衝撃であった。驚きのなか、各自動車メーカーの対応は分かれた。あふれる注文に目をつけて価格を下げて顧客を奪おうとする者もいれば、逆に価格を上げて真っ向勝負を挑む者もいた。過去2年にわたる価格競争により、自動車産業全体のサプライチェーンは、すでに限界点に達しつつある。
一部のブランドが価格を引き上げたことを、価格競争終息の兆候と見る向きもあるが、むしろ「嵐の前の静けさ」に過ぎないとする悲観的な見方も根強い。

情報源

汽车价格战,要结束了?

ttps://36kr.com/p/3369958287886087

 

01小米YU7が市場を席巻、テスラは真っ向からの対抗策

 小米YU7は、発売後わずか3分で予約台数20万台を突破し、18時間で24万台という受注上限数を記録した。この結果は、自動車業界全体に衝撃を与えた。理想汽車のCEO・李想氏は微博上で「中国および世界の自動車産業史における奇跡」と賞賛し、小鵬汽車の董事長・何小鵬氏も「神話的な数字」と評した。小米グループの創業者・雷軍氏ですら、この盛況は予想を上回るものだったと述べている。
このような驚異的なスタートを受け、他社は眠れぬ夜を過ごすこととなった。なぜなら、小米という「自動車業界の常識が通用しない強敵」にどう対応すべきか、前例がないからである。

 

02即座に打たれた対抗策と割引合戦の再来

 小米YU7の発表から1週間も経たぬうちに、蔚来(NIO)、极氪(Zeekr)、智己(IM)、阿维塔(Avatr)、智界といったブランドは、小米の予約ユーザーを対象にした「転向補償策」を相次いで発表した。すでに支払った小米の予約金に対し、現金あるいはポイントで補填を行うという内容である。
同時に、各社は価格引き下げに踏み切った。例えば智界は全車種で2万元の現金補助、理想汽車はL6モデルに対し5年間金利ゼロのローンプランを導入し、日々の支払いはわずか99元からという設定である。

 だが、一方で真逆の動きを見せたのがテスラ(特斯拉)である。7月1日、モデル3と新型モデルYのロングレンジモデルが仕様アップグレードとともに発表され、価格が1万元引き上げられた。モデル3ロングレンジは航続距離が713㎞から753㎞に、加速性能も0-100㎞/hが4.4秒から3.8秒に向上したという。搭載される「加速パッケージ」は1.41万元相当であり、価格引き上げ幅を上回る内容とされた。

 価格改定のタイミングについて、テスラの販売担当者は「すでに決まっていたことであり、小米YU7の熱狂的な話題が落ち着いた後に発表する必要があった」と説明する。また、テスラ内部では「モデルYとYU7の顧客層は異なる」との認識が強く、一部のYU7予約者が納車の遅れを嫌ってモデルYへ流れる事例も報告されているという。
なお、価格は上昇したものの、5年無金利の金融プランは7月以降も継続されている。消費者の反応は落ち着いており、「テスラの価格調整はもはや日常の一部」との声も少なくない。従来のオーナーからは「裏切られた」とする不満も出ているが、性能向上を加味すれば「損ではない」との評価もある。

 

03“高利返し”の終焉、BBAブランドも値上げへ

 価格を上げたのは、テスラだけではない。「国産車の全面的な価格引き上げで、自動車業界は2年前の価格体系に戻ろうとしている」。そんな論調がSNSを中心に広がっている。
最近、アウディ、BMWといった高級ブランドの4S店(ディーラー)では、価格改定の兆候が見え始めている。例えばBMW 3シリーズは8000元、5シリーズは1万元、X5は1.5万元程度の値上げが予想されている。アウディ A3(中高グレード)も7000~8000元の値上げが見込まれ、メルセデス・ベンツでは過去より5万元高く提示されたという報告もある。
これらの値上げの背景には、「高利返し」政策の終焉がある。これは銀行が自動車ローン拡販のため、ディーラーに高額のリベートを提供し、ディーラーがその分を販売価格に反映させていた仕組みである。結果として「ローンのほうが現金一括より安い」という現象が起きていたが、6月に入ってから複数の銀行がこの政策を中止。消費者が実際に支払う金額が増加し、すでに予約を入れていた人が定金を返される事態も発生している。
あるメルセデス・ベンツのベテラン営業は、「今は“全額払いに誘導している”というのが正しい」と語り、「これまでの補助が終わり、価格が本来の水準に戻りつつあるだけ」と説明する。

 

04価格上昇と消費者の不信感

 しかし、値上げを受け入れる消費者は少ない。上海のエンジニア・李一然氏は、BMW i5を購入予定だったが、価格が1.1万元値上げされたことに怒り、即座にキャンセルした。「BMWでなければならないわけではない。他ブランドを見ればよいだけ」と語る。
一方、徐涛氏のように“高利返し”終了前に契約した人は、「今だったら絶対に買わない」と語る。こうした消費者は価格感度が高く、ブランドロイヤルティが低いため、わずかな価格変動でも購買行動が大きく左右される。自動車販売店の客足も目に見えて減少しており、営業担当者は「どう価格を提示すればよいかわからない」と困惑している。
現在のところ新たな支援政策は現れておらず、真夏の暑さのように苦しい状況が続いている。唯一確実なのは「価格は上がる」という点であり、あるアウディの営業担当者は「全車種が価格を調整する予定」とし、時期としては7月15日以降を見込んでいる。

 

05価格戦争は終焉するのか?

 2023年1月、テスラ中国がモデル3とモデルYの過去最低価格を発表したことで価格戦争の口火が切られた。その後、BYD(比亜迪)が秦PLUS DM-iを10万元以下で投入し、「ガソリン車とEVの同価格時代」が到来。以後、地方政府の補助を背景に、30以上のメーカーが追随し、業界全体に値下げの波が広がった。
この1年、値下げは止まらず、2024年もテスラが大幅値下げを敢行し、BYDも秦PLUSの価格を7.98万元に設定。さらに2025年5月には22車種で最大5.3万元の値下げが行われ、市場には「5万元でBYDが買える」という状況が現出した。
消費者にとっては嬉しい価格競争だが、供給側にとっては「命を削る戦い」である。価格体系の崩壊、顧客の信頼低下、販売チャネルの疲弊、サービス品質の劣化といった副作用が噴出し、業界全体が危機に瀕している。
価格が唯一の競争手段となる中、品質やサービスといった価値は無視され、コストカットが部品や工程にまで及ぶ。「多少の不具合なら問題なし」という風潮のもと、顧客に渡る車両には、数々のリスクが内包されるようになった。

 こうした状況に対し、5月31日には中国汽車工業協会が「無秩序な価格競争に反対する」緊急提言を発表。全国工商聯汽車経銷商商会も「内巻競争(過度な価格競争)」の停止を呼びかけた。さらに中小企業への支払い遅延を禁じる新たな『条例』が施行され、広汽グループを皮切りに複数のメーカーが「60日以内の支払い」を約束。自動車業界には、ようやく一息つける空気が流れ始めた。

 

06戦いは終わらない

 とはいえ、価格戦争が終息に向かっているかといえば、そうではない。業界関係者は「第2四半期終了後、各社は戦略を再 調整している」としつつも、「淡季(売上が落ち込む時期)」にあたる今、各社は新たな金融政策や販促策を打ち出すだろうと予測する。
顧客である徐涛氏も「今は一時的な落ち着きにすぎず、すぐにまた価格競争が再燃する」と見ており、多くの人が「今は嵐の前の静けさ」と捉えている。
閑散とした4S店で営業スタッフがつぶやいた。「価格はもう底を打った。これ以上は無理だ」と。その静けさの中、確かなのは「嵐はまだ終わっていない」という現実である。

 この2年間、値下げ競争が加熱していた中国の自動車市場ですが、政府の介入もあり、その勢いはやや落ち着いてきています。ただ、中国では今なおデフレ傾向が続いているため、たとえ一時的に落ち着いたとしても、またいつ値下げ競争が再燃するかわかりません。

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