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【中国自動車最前線】クルマの価格戦争は集結したのか?ー嵐の前の静けさのいま2025.07.24

小米YU7。小米公式サイトより
一部のブランドが価格を引き上げたことを、価格競争終息の兆候と見る向きもあるが、むしろ「嵐の前の静けさ」に過ぎないとする悲観的な見方も根強い。
情報源
汽车价格战,要结束了?
ttps://36kr.com/p/3369958287886087
01小米YU7が市場を席巻、テスラは真っ向からの対抗策
このような驚異的なスタートを受け、他社は眠れぬ夜を過ごすこととなった。なぜなら、小米という「自動車業界の常識が通用しない強敵」にどう対応すべきか、前例がないからである。
02即座に打たれた対抗策と割引合戦の再来
同時に、各社は価格引き下げに踏み切った。例えば智界は全車種で2万元の現金補助、理想汽車はL6モデルに対し5年間金利ゼロのローンプランを導入し、日々の支払いはわずか99元からという設定である。
なお、価格は上昇したものの、5年無金利の金融プランは7月以降も継続されている。消費者の反応は落ち着いており、「テスラの価格調整はもはや日常の一部」との声も少なくない。従来のオーナーからは「裏切られた」とする不満も出ているが、性能向上を加味すれば「損ではない」との評価もある。
03“高利返し”の終焉、BBAブランドも値上げへ
最近、アウディ、BMWといった高級ブランドの4S店(ディーラー)では、価格改定の兆候が見え始めている。例えばBMW 3シリーズは8000元、5シリーズは1万元、X5は1.5万元程度の値上げが予想されている。アウディ A3(中高グレード)も7000~8000元の値上げが見込まれ、メルセデス・ベンツでは過去より5万元高く提示されたという報告もある。
これらの値上げの背景には、「高利返し」政策の終焉がある。これは銀行が自動車ローン拡販のため、ディーラーに高額のリベートを提供し、ディーラーがその分を販売価格に反映させていた仕組みである。結果として「ローンのほうが現金一括より安い」という現象が起きていたが、6月に入ってから複数の銀行がこの政策を中止。消費者が実際に支払う金額が増加し、すでに予約を入れていた人が定金を返される事態も発生している。
あるメルセデス・ベンツのベテラン営業は、「今は“全額払いに誘導している”というのが正しい」と語り、「これまでの補助が終わり、価格が本来の水準に戻りつつあるだけ」と説明する。
04価格上昇と消費者の不信感
一方、徐涛氏のように“高利返し”終了前に契約した人は、「今だったら絶対に買わない」と語る。こうした消費者は価格感度が高く、ブランドロイヤルティが低いため、わずかな価格変動でも購買行動が大きく左右される。自動車販売店の客足も目に見えて減少しており、営業担当者は「どう価格を提示すればよいかわからない」と困惑している。
現在のところ新たな支援政策は現れておらず、真夏の暑さのように苦しい状況が続いている。唯一確実なのは「価格は上がる」という点であり、あるアウディの営業担当者は「全車種が価格を調整する予定」とし、時期としては7月15日以降を見込んでいる。
05価格戦争は終焉するのか?
この1年、値下げは止まらず、2024年もテスラが大幅値下げを敢行し、BYDも秦PLUSの価格を7.98万元に設定。さらに2025年5月には22車種で最大5.3万元の値下げが行われ、市場には「5万元でBYDが買える」という状況が現出した。
消費者にとっては嬉しい価格競争だが、供給側にとっては「命を削る戦い」である。価格体系の崩壊、顧客の信頼低下、販売チャネルの疲弊、サービス品質の劣化といった副作用が噴出し、業界全体が危機に瀕している。
価格が唯一の競争手段となる中、品質やサービスといった価値は無視され、コストカットが部品や工程にまで及ぶ。「多少の不具合なら問題なし」という風潮のもと、顧客に渡る車両には、数々のリスクが内包されるようになった。
06戦いは終わらない
顧客である徐涛氏も「今は一時的な落ち着きにすぎず、すぐにまた価格競争が再燃する」と見ており、多くの人が「今は嵐の前の静けさ」と捉えている。
閑散とした4S店で営業スタッフがつぶやいた。「価格はもう底を打った。これ以上は無理だ」と。その静けさの中、確かなのは「嵐はまだ終わっていない」という現実である。