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【Z99次・上海〜広州白雲】来年、置き換えが噂される上海局の花形列車に乗る2025.12.24

先週末、上海から広州へ戻る際、久しぶりにZ99次直達特快列車に乗車した。上海〜広州白雲間1805㎞を16時間26分で結ぶこの列車は、上海局が誇る「緑皮車」、外観を緑色に纏う従来型客車による長距離寝台特急の代表格だ。
効率だけを考えれば、所要時間11時間台の寝台新幹線(動車組)を選べばいい。だが、このZ99次には、そうした合理性だけでは測れない魅力がある。

2026年初頭にも次世代型寝台列車CR200J型への置き換えが噂されており、機関車が牽く客車寝台特急としての姿を目にできる時間は、もうそう長くない。
「眠れれば車両は何でもいい」という人にとっては大きな違いではないだろう。しかし、子どもの頃から〈機関車+客車〉という編成の寝台特急に憧れてきた身としては、この列車が現役で走っているうちに、どうしても乗っておきたかった。

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置換えが噂になっているCR200J型

もとは香港直通列車だったZ99次
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香港・紅磡に入線するK99次(2004年8月撮影)

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2006年夏に上海郊外で撮影したK100次

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2008年1月より車両を25T系に一新したT99次。この地は15年後には広州白雲駅に変わる

 Z99次の歴史は古い。香港返還のわずか2カ月前、1997年5月19日に「滬九直通車」(滬は上海の別称。九は九龍の意味)として運行を開始した。当時はアルファベットを用いず、単に「99/100次列車」(100次は復路の列車番号)と呼ばれていた。
上海を起点とするこの列車は隔日運行で、1日は香港・紅磡へ、もう1日は広州東へ向かうという独特のダイヤを組んでいた。 香港行きの場合、全18両編成のうち1〜11両が広州東で切り離され、そのまま紅磡へ。残りの車両は広州東に留置される。折り返しの100次列車は、紅磡から11両編成で発車し、広州東で併結して上海へ向かうという運用だった。
車両構成も異なり、広州東止まりは軟臥1両に硬臥・硬座中心の編成。一方、香港直通車は高級軟臥1両、軟臥3両を含む、やや“格上”の内容だった。

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2018年9月、12時半頃紅磡に向かうZ99次。MTR東鉄線の大学駅にて

 出入境手続きは、1997年から2003年秋までは東莞市の常平駅で実施。その後は上海駅と紅磡駅で行われるようになり、列車内は「すでに出国済み」という扱いとなったため、中国国内の途中駅に停車してもホームへ降りることはできなかった。 上海駅でも、国内列車用と香港直通列車用で通路と待合室が分けられていたことを覚えている。
2008年1月には最高速度160㎞対応の25T系客車に置き換えられ、2014年12月には「直達(Zhida)」を意味するZの頭文字が付き、現在の列車番号となった。 しかし2020年1月、新型コロナウイルスの影響で運休。2023年8月には正式に香港直通運行が終了し、紅磡駅の出入境機能も失われた。 その後、中国国内専用列車として復活したZ99次は、2024年4月から終点を広州東から広州へ移し、25年5月に広州白雲に移り現在に至っている。
切符購入で大失敗
 今回の乗車にあたり、久々に大きな失敗をやらかした。高級軟臥の切符を無事に確保し、出発日まで浮かれていたのだが、12306アプリの発車通知を見て愕然。1日早い日付で購入していた。
発車まで48時間。改簽(変更)をしたいところだが、上海発列車は発売制限があり、当日にならないと枠が開放されない。仕方なく一度払い戻しを行い、改めて購入に挑むことにした。
当然ながら、発車2日前の高級軟臥はすでに売切表示(ワザと売切表示にしていることは分かっていた)。やむなくキャンセル待ち(候補下単)で申し込む。これは一旦全額(1077元)支払い、下段が取れればそのまま、上段なら差額が返金され、購入できなければ全額払い戻しとなる仕組みだ。
4時間後、まずは上段ベッドを確保。出発当日まで様子を見ていると、なんと下段が空席で発売されているのを発見し、慌てて改簽。無事、下段ベッドを手に入れることができた。
なぜ下段にこだわるのか。理由は単純だ。はしごの昇り降りが不要で、疲れたらすぐ横になれる。長距離列車では、この差が意外と大きい。

先頭機関車を撮り、いよいよ出発
 この日の上海は10度を下回る寒さ。広州の感覚で半袖のまま来なくて正解だった。厚手の長袖とパーカーを着込んでも、駅前は身に染みる冷え込みだ。
工事中の上海駅南広場を西側から入り、2階の6号待合室へ。外国人旅客は自動改札が使えないため、有人改札でパスポート情報を手入力してもらい、ようやく構内へ入る。
Z99次は1番線。これは昔から変わらない。

エスカレーターを降りると、誰よりも早く車両へ向かう。荷物を高級軟臥個室に置いたあと、真っ先に向かったのは先頭車両だ。
「乗る・買う・撮る」──乗り鉄にはそんな三原則がある(もちろん筆者の勝手な定義だ)。 最近は撮影対策で機関車をホーム外に止めることも多いが、この日は客車が数両間引かれており、幸運にも先頭部をしっかり撮影できた。
編成は以下の通り。

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上海駅1番線ホームに停車中のZ99次。3両の欠番で先頭車両の撮影ができた

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9号車は2段ベッドとソファーとトイレ付きの高級軟臥。下段の奥行きは80㎝

 先頭に立つのは、上海局所属の和諧1D型172号機。棗色の車体が、構内照明に美しく浮かび上がっていた。
17時19分、ほとんど振動を感じさせることなく、列車は静かに上海駅を後にする。 個室のベッドに腰掛け、スマートフォンで動画を回す。夕暮れの街明かりは、15分も経たないうちに郊外の闇へと溶けていった。
食堂車が、いい意味で別物だった
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すごく評判のいいZ99次の食堂車。ボリュームあるし価格も安い

 車内巡回中の乗務員に聞くと、食堂車はすでに営業中だという。隣の車両だから行きやすい。空席に座って待つこと約1時間。弁当販売用のカートが次々と出ていく中、なかなか注文を取りに来ない。
ようやくメニューを見せてもらい、まず驚いたのは価格の安さだった。 この列車の食堂車は評判がいいとは聞いていたが、正直ここまでとは思っていなかった。
ご飯1杯におかず2品を注文。

運ばれてきた料理を見て、今度は量に驚く。これぞ、かつての食堂車クオリティ。 最近の列車では「野菜多め、肉ほぼ無し」という残念な内容も多いが、今回は久々に満足できる一皿だった。量が多すぎて少し残してしまったほどだ。
中国の夜行列車の食堂車は、ここ数年で確実に改善されている。

これが単なるデフレの結果でないことを願いたい。

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眠れない夜中、通路に出て椅子に座って遠くに光る街の明かりを見つめる

本来より13㎞手前が終点
 列車は杭州南、金華に停車した後、終点までノンストップ。 深夜、株洲で機関車交換を行っている気配をぼんやり感じつつ、結局ほとんど眠れないまま朝を迎えた。
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夜中眠れなかったが韶関東駅手前まで来ていた

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朝ごはんは15元

 顔を洗い、再び食堂車へ。朝食は15元と20元の2品のみだったが、やはり量は多く、お粥を少し残した。
列車は花都、郭塘、江村、大朗を経て広州白雲へ向かう。かつて何もなかった白雲区だが、新駅開業とともに風景は一変し、都市間鉄道や高鉄が在来線と並走する区間が続く。

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広州白雲というサボ(行き先)を見ると、現実に引き戻される。広州東まで運んで欲しかった

 本来なら徳康路の跨線橋をくぐり、白雲山の裾をかすめて広州東へ到着するはずだった。だが現在は、そこから13㎞手前の広州白雲が終点となっている。
天河区在住者にとって、この変更は正直つらい。

かつては友和ホテルからタクシーで10分だった距離が、今や公共交通機関を乗り継いで95分。

広州東や広州駅は高鉄・都市間鉄道の拠点となり、在来線の長距離列車が発着する風景は、すでに過去のものになりつつある。
嘆いても仕方がない。

ただ、この花形列車の置き換えが一日でも先延ばしになることを祈るばかりだ。
まだ走っているうちに、乗れるうちに。 来年以降、この姿を二度と拝めなくなる可能性は、決して低くないのだから。

Z99次データ
中国鉄路上海局集団有限公司上海〜広州白雲

17:19〜翌9:45

16時間26分

1805㎞

硬座:206元

硬臥下段:377元

軟臥下段:668元

高級軟臥下段:1077元

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