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中国企業働き方改革、脱996の道2025.03.20

中国企業働き方改革、脱996の道
コロナ前まで中国大手企業は996という勤務スタイル用語がネットで流行った
从“996”到“准点下班”!大厂骤变:职场迎来效率革命和价值重构
深圳のDJI本社では、夜9時になると上司や人事担当者が3回にわたり従業員に退社を促し、残業を禁止している。上海オフィスではさらに徹底しており、夜9時にオフィスの電気が一斉に消灯されるという。その後、他の大手企業も次々と追随し、美的集団は「18時20分以降、すべてのデスクを空けること」を義務付け、海爾(ハイアール)は週末の社内食堂の営業を停止し、社員に完全週休2日制を強制するなど、「反内巻(過剰競争の是正)」の動きが急速に広がっている。「残業=努力」という旧来のルールが、今まさに崩れ去ろうとしている。
そして今、風向きは一変しつつある。定時退社が恥ではなくなり、むしろ企業側が「残業禁止」を制度として打ち出すようになった。この変革は一見すると「労働者の勝利」にも思えるが、実際には中国の職場環境が「人的リソースの消耗」から「効率革命」へと転換し、「労働時間崇拝」から「価値創造」へと再構築される始まりに過ぎない。
では、なぜ大手企業が率先して「反内巻」を推進するのか。その背景を「時勢・環境・人材」の三つの観点から分析していく。
大手企業が「反内巻」の先陣を切った理由
「天の時・地の利・人の和」から分析する
天の時:政策の追い風
2024年末に開催された中国共産党中央経済工作会議において、「内巻式競争」の是正と地方政府・企業の行動規範の強化が打ち出された。そして、先日閉幕した全国人民代表大会(全国両会)では、「内巻式競争の総合的な整備」が初めて政府活動報告に明記され、職場における不合理な競争を是正する方針が明確に示された。
地の利:国際市場への適応
2024年末に施行された「EU強制労働禁止規則」では、「過度な長時間労働」が強制労働と見なされることになった。今回「反内巻」の先頭に立つDJI(大疆)、美的、海爾(ハイアール)は、いずれもEU市場で大きなシェアを持つ企業である。EU市場での競争力を維持するためには、「労働時間コンプライアンス」の審査をクリアしなければならず、企業側も労働環境の改善を迫られることとなった。
人の和:新世代の価値観の変化
「定時退社は権利であり、恩恵ではない!」このスローガンを掲げる00後(2000年代生まれ)の若手社員たちが、職場文化の変革を後押ししている。 SNSでは、「#職場整頓」というハッシュタグの閲覧数が100億回を超え、若者たちは退職届を武器にパワハラ(PUA)に対抗し、「労働法」で「ファイターズ契約(奋斗者协议)」に反論するなど、法的手段を活用しながら自身の権利を守ろうとしている。
反内巻の本質は、企業管理の革命・企業文化の再構築・新技術の活用
例えば、美的グループは「六条禁令」を打ち出し、新たな管理手法を導入することで「見せかけの勤勉」を排除し、価値創造の本質へと回帰した。字節跳動(バイトダンス)は「高額基本給+フレックスタイム制」を模索し、美的は評価基準を「労働時間」から「プロジェクトの革新度」へと転換。こうして「努力=残業ではない、残業=高収入ではない」という認識が企業内に浸透しつつある。
さらに、AIやデジタルツールが企業の効率向上を後押ししている。DJI(大疆)は技術による単純労働の代替を進め、「アルゴリズムによるバグ修正」を導入することで、「残業して手作業でコード修正」という従来のスタイルを変革。従業員がより高度なイノベーションに集中できる環境を生み出している。
管理の引き算=無駄な業務を削減し、非効率を排除
技術の足し算=新技術の活用で人材の価値を最大化
文化の掛け算=企業文化を刷新し、組織の活力を高める
とはいえ、政策が動き、企業が改革を進めても、「物理的な退勤=精神的な解放」とは限らない。現在の「強制退社」の流れは、あくまで変革の入り口に過ぎない。
技術で単純労働を削減し、
管理手法で個々の創造力を解放し、
低価格競争ではなく、差別化戦略で成長するようになれば、
「反内巻」は単なるスローガンではなく、企業成長の新たなエンジンとなる。
今後、企業の競争力を測る指標は、深夜まで灯りの消えないオフィスではなく、従業員の幸福度や時間当たりのイノベーション価値へと変化するだろう。個人の価値もまた、労働時間の長さではなく、問題解決力や驚きを生み出す能力で判断される時代が来る。
この変革のゴールは、「定時退社」と「高効率な創造」が両立する未来。それこそが、企業の真の高品質成長の答えなのだ。