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【第23回広州モーターショー】電動化時代から車載OS時代への主役交代がより顕著に2025.12.03

広汽グループはA区2.2を貸切で出展。広汽トヨタ、広汽ホンダも同じエリアで出展していた

 2025年11月21日から30日にかけて開催された第23回広州モーターショーが幕を下ろした。会期中、来場者数は85.5万に達し、国内外の6000超のメディア機関から計1万2300人の記者が取材に訪れるなど、その熱気と注目度の高さを示した。

 「新しいテクノロジー・新しい生活」をテーマに、「第14次五カ年計画」の総仕上げと「第15次五カ年計画」の始動という歴史的節目に開催された同ショー。世界の自動車産業が百年に一度の大変革期を迎える中、同展は中国自動車の未来に向けた技術革新を披露し、国際的イベントとして、中国自身が自動車産業の変革を牽引する強い原動力を示した。

 今回は、実際同ショーを訪れた筆者が感じた印象を取り上げていく。

共通のOSやソリューションに依存するメーカーの増加

ハーモニー(鴻蒙)と呼ばれる華為の自動運転+OSブース。出展メーカーの1/3は同社の技術を採用している

 今回の広州モーターショーでは、総展示車両1085台のうち629台が新エネルギー車(NEV)となり、93台の新型車が初公開された。NEV比率は初めて50%を突破し、58%に達した。中国における電動化の普及はもはや常識となり、BEVやPHEVの主力価格帯は10万元台へと下がり、一般消費者でも「手の届く」範囲に収まるところまで来ている。
 しかし、今回のショーでより鮮明になったのは、電動化の次に訪れる“クルマのスマートフォン化”という新たな潮流だ。18.2エリアには、車載OS・自動運転・車載チップ・充電技術を統合した華為の総合ブランド「鴻蒙智行」が出展。さらに4.2エリアには、車載OS・自動運転・中央計算プラットフォーム・通信・センサー・電源管理を一体化した総合車載プラットフォーム「華為乾崑」が展示された。

総合プラットフォームの華為乾崑はA区4.2で展示

 驚くべきは、外資系の一部およびBYDグループ・吉利グループを除く多くのメーカーが、これら華為のシステムのいずれかを採用している点だ。華為の技術はコストを抑えて導入でき、メーカーにとっては自社開発負担の軽減、ユーザーにとってはより高度で扱いやすい車載体験の実現につながる。
 特に、“鴻蒙智行”を日系メーカーや新興メーカーまでもが堂々と採用・展示し始めている状況は、中国市場において“クルマのスマホ化”が不可逆の段階へ入ったことを象徴している。
 かつて車載OSやコネクテッド機能は、メーカー独自の“付加機能”に過ぎなかった。しかし現在では、多くの中国ユーザーが運転席周りのユーザー体験をスマートフォンと同等か、それ以上に重視するようになっている。
 いまだこれらOSを採用していないメーカーが今後どのように動くのか。採用するか否かが、経営判断の大きな岐路となるだろう。

 もっとも、同じプラットフォームを横並びで採用すれば所有満足度は向上するものの、各社はその先で、独自の付加価値をどう生み出すかという新たな課題に直面することになる。

中国自動車だけでやっていける

70万元からスタートする尊界S800は江淮と華為の共同開発。スマートコクピットを用意。2025年5月末から11月20日までの販売台数は1.8万台

 もう一つ際立ったのは、超高級外資系ブランドの相次ぐ不参加だ。

 かつて特設エリアには100万元を超える高級外車がずらりと並び、ショーの華やかさを象徴していた。しかし昨年頃から外資系ブランドの出展見送りが目立ち始め、今年はついにランボルギーニ、ベントレー、ロールス・ロイス、アストン・マーティン、ポルシェに加え、ヒョンデやスバルまでもが揃って姿を見せなかった。背景には、中国経済の減速による販売低迷や、各社が進めるコスト削減の影響があるとみられている。 

小米SU7ウルトラ

小鵬G7

 高級外資系ブランドのブースが消えた今回のショーで浮き彫りになったのは、中国メーカーの高級ブランド化が一段と進んでいること。BYD、紅旗、小米などのメーカーは、自社アプリによる事前予約や、会場での専用QRコードを用いた入場管理を導入。ブースへのアクセスをあえて制限し“特別感”を演出することで、ブランド価値を高める戦略を打ち出した。中国メーカーは単なる価格競争から脱却し、ユーザー体験や付加価値の向上を重視する姿勢を鮮明にしている。 

BYDの海洋シリーズの海獅D5のEV

 さらに、外資系ブランドが不在にもかかわらず、ショー全体の存在感はむしろ維持されている。背景にあるのは、車載OSによる高度な運転支援機能や、大容量バッテリーを活かした長距離走行性能など、中国メーカーが提供する技術的価値の急速な向上だ。日本にいると、こういった最新の技術情報に触れる機会が少ないため、突然の進化に驚かされることも少なくない。

 こうした付加価値の積み重ねによって、「外資系ブランドがいなくても困らない」市場が徐々に形成されつつある。
 今後の注目点は、中国各大手グループが激化する競争の中でどのように生き残るかである。トップセールスに君臨するBYDグループ、吉利グループに加え、新興の小米、小鵬、理想、奇瑞、そして広汽、東風、北汽、上汽、紅旗、長城、長安、江淮、奇瑞といった老舗グループまで、業界全体が再編の可能性を抱えながら新たな競争環境に向かっている。来年以降もその動向から目が離せない。

日系企業について

中国進出20周年を記念したレクサスブース

広汽トヨタの鉑智7と新型ウェイランダー

 日系企業では、広汽トヨタ、一汽トヨタ、広汽ホンダ、東風ホンダ、東風日産、長安マツダの6つの合弁企業が出展した。なかでも存在感を示したのは広汽トヨタだ。

 同社は中国市場向けに新開発した大型BEVセダン「鉑智7(bZ7)」を7台展示。全長5m超の大型セダンは、中国の若年層の嗜好に合致する外観・内装に加え、華為(ファーウェイ)のスマートコクピットを積極的に採用。価格は「20万元台」とされ、依然としてセダン人気が根強い中国市場でヒットの可能性が高いとみられている。
トヨタの強みは、全方位戦略を着実に進めている点にある。HV(ハイブリッド)を中心に販売は堅調で、2025年上半期の販売台数は広汽トヨタが約36万台、一汽トヨタが約37万台を記録。2025年度も世界販売1000万台の維持が見込まれる。

広汽ホンダのBEVのP7。売れ行きはいまいちだが、よく作り込まれている

 一方、広汽と東風を合わせたホンダの2025年上半期の販売台数は約31万台で、前年同期比24.2%減と大幅に落ち込んだ。失速の要因として指摘されるのがデザインだ。同社の代表的なセダンであるアコードやシビックは、長年シンプルで流麗なデザイン哲学を受け継ぎ、低い車高と鋭いヘッドライトでスポーティーさを演出してきた。しかし、ここ数年で中国メーカーのデザイン力が急速に向上し、ユーザーの審美眼もより厳しくなったことが、販売不振の一因とされる。また、満を持して投入したBEVの「P7」も販売価格と消費者ニーズが合わず、中国におけるEV戦略の再考が迫られている。

新型ティアナと新型N6

 東風日産は、EVのN7のヒットにより一息つく状況だ。主力のシルフィー(軒逸)やN7に加え、今回のショーではPHEVの新型N6と新型ティアナ(天籟)を展示。特にティアナは華為のスマートコクピットを採用し、これまで低迷していた中国市場での巻き返しを図る。
 日系大手3社を概観すると、中国という特異で競争の激しい市場で生き残りを図るため、開発リーダーを現地スタッフに委ね、現地サプライヤーの自動運転支援や車載OSといった最新技術を積極的に搭載する企業も増えている。 

 世界で最も厳しいとされる中国市場を乗り切るべく、各社のさらなる企業努力に期待したい。

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