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【中国自動車最前線】新本社移転後、GACが放つ次なる一手2024.12.05

第22回広州モーターショーに出展したGACの昊鉑HL。2025年3月に正式発売予定
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自家厂牌冲刺200万辆,广汽背水一战
11月、珠江新城から番禺区汽車城に新本社を移転したGAC(広汽グループ)が、さらなる飛躍に向けた大規模な戦略を構想している。11月18日の業績報告会において、同社の幹部は「現在、各ブランドが積極的な対策を講じており、販売状況は着実に改善している」と自信をのぞかせた。
その3日前、広州モーターショーが開幕し、GAC傘下の五大車両ブランドは一挙に五つの新モデルを発表した。このうち、自主ブランドは「三本の矢」として「伝祺S7」「埃安UT」「昊鉑HL」の3つのモデルを市場に投入した。
自主ブランド販売比率を60%以上に引上
BEVの昊鉑HTは2024年4月発売で価格は22万元〜。後部ドアはガルウィングで内装はナッパ素材
地元での開催という優位性を生かし、GACは新たに「三年番禺行動」計画も発表。この計画では、さまざまな改革措置を通じてグループ全体の年間販売台数200万台を目指す。GAC総経理の馮興亜氏は、「2027年までに、自主ブランドの販売比率をグループ総販売台数の60%以上に引き上げる」と力強く宣言した。
しかし、この目標達成に至る道のりは決して平坦ではない。GACは現在、従来の内燃機関車(ICE)から電動車(EV)への移行という市場プレッシャーに直面しているだけでなく、全体戦略の転換という難題にも直面している。この状況下で馮氏は「大胆に挑む」ことを決断したのだ。
GACのこうした取り組みは、自主ブランドの競争力を強化し、同時に新エネルギー車時代での存在感を高めるための重要な一歩となるだろう。
広汽グループの挑戦
2025年1月から発売がはじまると言われるBEVのAYON UT。価格は10万元台
「広汽グループは課題に直面する中で、改革の道を歩み、改革の成果で未来を切り開く」と、馮氏は力強く語った。本社移転はその第一歩に過ぎず、同社の更なる成長への決意が見て取れる。新本社のある番禺汽車城は、広汽伝祺(トランプチ)や広汽埃安(アイオン)、そして広汽研究院の拠点であり、GACの自主ブランド発祥の地でもある。この地域への本社移転は、自主ブランドの競争力をさらに高めるための布石となっている。
近月、同氏は製品ラインナップを大幅に見直し、改革を進めている。その成果として、2024年上半期には、同社の省エネルギー車と新エネルギー車(NEV)の販売比率が40.63%にまで上昇した。また、今年新たに発表されたモデルも自主ブランドに重点を置いている。例えば、広汽伝祺GS4 MAXやM6 MAX、広汽埃安の第二世代AION Vなどのモデルは、刷新されたラインナップの一例だ。
伝祺GS4のMAX。1.5TGDIエンジンと7速湿式デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせている
同モーターショーの会場では、GACが広交会展館の2.2ホールを全面的に使用し、50車種以上(広汽ホンダ、広汽トヨタも含む)を展示。自主ブランドの主要モデルが一堂に会する光景は、同社の自信と意欲を感じさせる。会場の案内員は「広州モーターショーは広汽にとって主戦場であり、例年、他のモーターショーを上回る成約実績を上げています」と話す。
しかし、こうした動きに対して「現状は、容易に成果を得られる低い枝の果実を摘み取るに過ぎない」との声もある。自動車業界の分析家、梅松林氏は「自主ブランドの本質的な進化が求められており、ブランドの核心となる特徴を確立することが不可欠」と指摘している。
「鯤鵬展翼」デザインを採用した広汽伝祺E9は同社MPVのPHEVモデル
こうした背景の中で、GACが発表した「番禺行動」は、改革を加速するための具体的な処方箋となっており、この計画は以下の4つの柱を掲げている。
1ブランドの再構築
2製品ラインナップの強化
3スマートドライビングの最前線への挑戦
4国際市場の開拓
合弁ブランドの並行展開
広汽トヨタのbz3X。動力面では、広州ニデコ自動車駆動システムが製造する駆動モーターを搭載し、最大出力は150kW。中創新航または江蘇正力新能源のリン酸鉄リチウム電池を装備
「合弁ブランドはGACの重要な構成要素であり、合弁協力と自主革新を揺るぎなく推進する」とGACの馮氏は述べ、両者のバランスを取る方針を強調。GACの全体収益は、長年にわたり合弁ブランドが主導してきた。 2024年上半期の収益データによると、広汽伝祺は254.59億元、広汽埃安は124.01億元を記録。一方、広汽ホンダは306.68億元、広汽トヨタは521.50億元に達し、グループ全体の収益の過半数を占めている。
合弁ブランドである広汽ホンダと広汽トヨタは、看板モデルに支えられた安定した顧客基盤を維持しており、市場全体の中で依然として存在感を発揮している。
トヨタシェナ
トヨタハイランダー
2024年上半期には、トヨタ「ハイランダー」シリーズが10万台を超える販売を達成し、前年同期比で33.62%の大幅な成長を見せ、また、トヨタ「シェナ」は3.52万台を販売し、国内BセグメントMPV市場で販売台数2位を記録した。
生産販売報告によると、第3四半期末までの両合弁ブランドの合計販売台数は、GAC全体の61.94%を占めており、前年同期の62.52%からわずかに減少したものの、依然としてグループ収益の重要な柱となっている。
GACの曽慶洪会長は、合弁ブランドの今後の戦略について「一方では、特にハイブリッド車(HEV)の競争力を強化し、従来型燃料車市場でのシェア拡大を目指す。他方では、新エネルギー車(NEV)の開発を積極的に進め、より多くの純電動モデルを市場に投入する必要がある」と述べている。
広汽ホンダの中国向けEVの燁シリーズ
今年の同モーターショーでは、両合弁ブランドも存在感を示した。広汽ホンダは新たに開発したスマートで効率的なBEV専用プラットフォーム「Wアーキテクチャ」を発表。このプラットフォームを基にした初のモデルである「燁P7」の量産版が初公開され、2025年上半期に市場投入される予定だ。しかし否定できないのは、合弁ブランドの市場シェアが減少しており、全体的な収益性にも課題が生じている点。2024年1月から9月にかけて、GACの累計販売台数は24.66%減少し、生産台数も54万台減少。収益と利益もともに下落した。
GACの経営陣は、「この問題の背景について、価格競争や製品ラインナップの単一性が影響している」と説明している。今後はBEV車両の迅速な投入に加え、レンジエクステンダー※車両の導入を増やし、製品の多様化を図っていく。
ただし、転換には多くの課題が立ちはだかると指摘されている。「合弁主体から自主主体への移行、高収益から低収益、さらには赤字への転換は、広汽が直面しなければならない現実的な問題だ」と前出の梅松林氏は語る。このような構造変化は同グループにとって厳しい試練となるだろう。
※電気自動車の航続距離延長を目的に搭載される、小型発電機からなるシステム。日本車ならマツダMX-30ロータリEV
智能化電動車時代への挑戦
デザインは大人しめのM6。12万元から
GACは、新エネルギー車(NEV)への転換を目指し、2017年から本格的に取り組みを進めてきた。ここ数年は特に投資を強化し、自主ブランドの成長に必要な基盤を整えることに注力している。
2024年第3四半期には、華為と協力覚書を締結し、その後も小馬智行(Pony.ai)、滴滴自動運転、辰致科技など複数の企業に投資をしてきた。同社は、独自の技術開発と投資・協業の二軸を並行させ、自動運転の分野で深く事業を展開する姿勢を明確にしている。
自主ブランドにおけるインテリジェントドライブ技術も大きく進化してきた。広汽埃安の高級ブランド「昊鉑(Hyper)」シリーズでは、L2++技術を搭載した「昊鉑HT」や「昊鉑GT」などのモデルを発表し、高速道路から都市道路まで対応可能な全域型インテリジェントドライブを実現。また、第2世代の「AION V」や「AION RT」では、これらの高度なドライビング技術を15万元(約300万円)級の車両にまで展開し、インテリジェント化の普及を図っている。
プチM9とも呼ばれている25年2月発売予定の新型M8。華為の4Dミリ波レーダーが搭載されると言われている
「2025年は広汽グループ自主ブランドにおけるプラグインハイブリッド車(PHEV)の大量投入の年となります。投資家の皆様には大いに期待していただきたい」と同グループ総経理の馮氏は述べる。
また、広汽研究院を基盤として、先端技術の研究開発にも注力している。同年11月には、GACが自主開発した飛行自動車「GOVE」が珠海航空ショーで初披露された。この車両は、車体シャーシ上での精密な飛行キャビンの離着陸デモを成功させ、未来への可能性を示したのだ。
長年培ってきた産業基盤により、GACの全体的な改革には無限の可能性が広がっている。